極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
プールサイドのほかのテーブルには、何組かのカップルが親しげに談笑していた。
「こんばんは」
とりあえずそう挨拶すると、貴行に椅子を勧められた。
テーブルを挟んで向かいに腰を下ろす。
まだなにも注文していないのか、目の前にはなにも置かれていない。
「夕食は?」
「済ませました」
ホテルの一階にあるラウンジでボンゴレを。
「なに飲む?」
「えっとそうですね……。あっ、昨夜いただいたワインがあれば」
花の蜜のような甘い香りが、実はかなり気に入ったのだ。
どこかご満悦の様子で貴行が店員に注文すると、すぐにボトルと空のグラスふたつが運ばれてきた。どうやら貴行もそれを一緒に飲むようだ。
店員に注いでもらい、早速乾杯。口をつけると、昨夜同様にふわっと甘い香りが鼻から抜けていく。