悪役令嬢、乙女ゲームを支配する
「サム!?」
「やあラナ。久しぶり。全然来られなくてごめん。いろいろ忙しくて、やっと君を迎えにこられたよ」
久しぶりに見たサムは相変わらずかっこよくて、鼓動が早まるのがわかる。
「……迎えにって?」
「君に、僕の一番好きな花を見せたいんだけど……今から時間はあるかな?」
「今から!?」
サムはいつも、なにもかもが突然だ。現れるのも、来なくなるのも。
結局店番を母に任せ、あたしはサムに手を引かれるがまま、見たことのない道を歩いた。そして、着いた先には――いつも街から眺めていた、大きな城が目の前に建っている。
「サム、いったいどういう……」
「いいから。こっち」
状況を把握できていないあたしなんておかまいなしに、サムは城の門をくぐると、堂々とあたしの手を握ったまま敷地内を歩いていく。すれ違う使用人たちと軽く挨拶を交わすサムの横で、あたしはうつむくことしかできなかった。だって、城の中に入るなんて、当然ながら初めてのことだ。
「――ラナ。顔を上げて」
足が止まり、サムに言われてあたしは恐る恐る顔を上げると、そこには大きく広がる野原と――まだ完成していないであろう、しかし見たことないくらい綺麗な花畑があった。
「ここって、もしかして……」
「そう。前にラナが言っていた、噂の〝大きな花畑〟だよ。……まだ全然、完成にはほど遠いけどね」
こんなに広い敷地で花が咲いているところを見られるなんて、夢みたいだ。感動で声にならず立ち尽くすあたしを見て、サムはくすりと笑った。
「もっと近くで見ていいんだよ」
サムにそう言われ、あたしはサムと共に花畑の方まで歩いていく。あそこに、サムの言っていた〝一番好きな花〟があるのだろうか。すると、足もとに小さな青い花が咲いていることに気づいた。よく見ると、野原にはいくつもの同じ青い花がところどころに咲いている。
――危ない。踏んでしまうところだった。
あたしが花を避けるように歩いていると、サムがまた急に足を止めた。サムを見上げると、サムもあたしの方を見ていたようで視線がぶつかる。