愛を捧ぐフール【完】
 きっと今世も妹であったクラリーチェを気にかけて、二十も年上のセウェルス伯爵に嫁がせるのは嫌だという事だろう。だが、たかが侯爵子息に決まった婚約に横槍を入れるのは無理だ。


 アルフィオが僕に頼みに来るのも分かる。


 だけど、僕にも出来ることなんてほとんどないんだ。


 昔も、今も。
 僕が全ての力を持っていれば、僕が地位などに縛られなければ。


 エレオノラをあんな目に合わせなかったのにーー。


 そっと目を伏せると蘇ってくる。無邪気に慕ってくれたかつての少女の姿が。


 キラキラと輝く黄金の髪を揺らして、桃色の瞳がくるくると色々な表情を浮かべていた。
その姿がとても可愛らしくて、僕へ向ける笑みがとても無垢で、何色にも染まって欲しくなくて、ずっと大事に守っていたかったのに。
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