彼女を10日でオトします
「俺がさ」とヒデさんは声のトーンを幾分下げた。「俺が初めてたすくに会ったのは小6で、夜の新宿で薫たちとつるんで遊んでるときだった」

 小6で夜の新宿って……。私の顔が引き攣っているのもお構いナシにヒデさんは、話を進める。

「薫の姉ちゃんが、ここいらで最後の族のアタマ張ってて、それに憧れたガキが俺らだったってわけなんだけど」

 そ、そういう世界もあるのね。私が小6の頃なんか、門限6時の10時就寝生活だったわよ。

「夏の蒸し暑い夜でよ。夏休みだったかな? お決まりの場所に集まって煙草ふかしてたら、フラっと現われたんだよ」

 た、煙草!? 小6の話しているのよね?

 ヒデさんの顔を見上げる。煙草と発育って実は関係ないのかしら……?

「ブンカって私立小学校知ってる?」

「ええ。知ってるわ。
エラい偏差値とお金が高い小学校よね?」

「そそ。そいつ、ブンカの制服着てんの。
あのみじけぇ短パンのあれ」

 ヒデさんは、足の付け根を切るような仕草をして見せた。
 
 ブンカと言えば、お金持ちの子、それも教育ママをもつ子だけが通うようなお受験校。
 みんな揃いの制服と校章が入ったランドセル、帽子を被って電車通学に勤しむ小学生。

「そんで、俺らをざっと見回してから、話掛けてきたんだよ、それも薫にだけに。
それ以外は眼中にねえってカンジで」

 ハっ、と笑うような、呆れているような表情そ見せてヒデさんは話を繋ぐ。

「『僕も仲間に入れてよ』って。それが、たすく。
そのときの、たすくの目が忘れられねえな。ニコニコしてるのによ、目の奥が刃物だった」

 これって……、本当の話かしら。

 今、ヒデさんが即興で作ってるんじゃないわよね、と疑ってしまうほど、私が暮らしていた世界とは全く違う世界だった。

< 299 / 380 >

この作品をシェア

pagetop