彼女を10日でオトします

 冷たい風は容赦なく、ヒデさんのブレザーを掴む指を攻撃してくる。

 ちょっと、どころじゃないじゃないの。
 ヒデさん、かなり飛ばしてるわよ。

 今まで感じたことの無い風に、ヘルメットから落ちる三つ編みが暴れ狂う。

 ちょっとでも気を抜くと私まで飛ばされてしまいそう。

 乗りなれないバイクの後ろで歯を食いしばる。

 たすくさん……今頃何をしているのかしら。

 もし家でくつろいでいたりしたらぶっ飛ばすわよ、と、心の中で叫んで、じわりじわりと這い上がってくる不安をかき消そうとするも、体の内側を圧迫するそれは、徐々に重さを増して。

 どうか、どうか、間に合いますように。

 感覚がなくなりつつある指にぎゅうっと力を込めた。


「到着」

 ブロロ、と余韻を残してバイクは止まった。

 すぐ横に黒い柵があった。
 視界の悪いヘルメットのまま大袈裟に首を捻って見回すと、私達が通っている高校よりもだいぶ大きな学校がそこにあった。

「これに沿って歩けば門に着くよ」

 ヒデさんが進行方向を指差す。

 凍ってしまいそうな指よりも、取ろうとしたヘルメットの方が冷たいことに驚いた。
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