彼女を10日でオトします
 慌てて後ろを向くと、私は言葉を失ってしまった。

 この世の者とは思えない。

 顔のパーツのひとつひとつが、その配置が、背格好が、突き詰めていえば、身長から足の長さから腕の長さから首の太さから、その全てが完全、完璧な男が立っていた。

 こんな人、見たことない。

 今まで、占いやお姉ちゃんのお店を通して色々な人を見てきたけれど、こんなに綺麗な男の人、初めてみた。

 お姉ちゃんから、自らを「殿」と名乗る教師がいる、と聞いた事がある。お姉ちゃんに言わせれば、「殿」がお姉ちゃんの中で唯一の上の上ランクの男らしいのだけれど……この人、お姉ちゃんに見せたら何て言うかしら……。

 身長は、ヒデさんくらいあるかしら。
 その人は、物静かな表情で私を見下ろす。

「俺は、何か用か、と訊いている」

 バリトンの声に物凄い圧力を感じる。水圧でいったら、間違いなく深海に匹敵するであろう圧力。

「あ、荒木薫さんに会いに……」

 その形のいい眉がくいっと上がる。

「ほう。翡翠の瞳を持った女が、薫に」

 翡翠……。
 あ、義眼!!
 私、義眼をはずしたままここまで来ちゃったんだわ!!

 突き刺すような視線に耐えられなくなった私は、慌てて視線を上に外した。

 数字が目に入る。

 この人――。

 
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