彼女を10日でオトします
「答えられないような理由か。ならば、S高校に連絡をさせてもらう。こっちに来なさい」

 その先生は怒っているのか、顔を真っ赤にして私の腕を引っ張った。

 セクハラー!! と女子高生の特権をフルに活用しようとしたところで、静かなバリトンボイスが横から入ってきた。

「僕の客です。入校は僕が許可を下しました」

 丁寧な口調とは裏腹、鋭い棘がびっしり生えた壁が迫ってくる、そんな危機感を感じさせる声色。

 先生は腕をひっぱる力がピタリと消えた。

「五十嵐君の……客か……」

「ええ」

 すごすごといったぐあいに、悔しそうな顔で私の腕から手を離した。

 なに、これ。

 生徒会長>先生という信じられない不等式が頭の中に浮かぶ。

 この学校、どうなってるの?
 うちの学校の生徒会長なんて、名前どころか顔すら知らないわよ。
 というか、うちの学校に生徒会長なんているのかしら。

 その、先生として正しい判断で私を追い出そうとした人の背中が小さくなり、見えなくなったところで、生徒会長は鋭い視線で私を見下ろした。

 反射的に私も睨みあげる。

「……なかなかいい目をする。女にしておくのは勿体無い」

 男女差別って言葉、知ってます?

「くだらん。男は女よりも腕力があり、女は男よりも忍耐がある。
もともと平等ではない。……履け」

 そう言って、学校名がプリントされているスリッパを私の前に置いた。
 お礼を言って、足を通した。

 めちゃくちゃな自論なのに、こうも堂々とはっきり言われると、そうなのかなと思ってしまう。これが生徒会長というものなのかしら。

「いいか。くれぐれも今のような面倒は起こすな。いくらこの俺でも権力には限界がある」

 今のは不可抗力です、とか、あなたがいなくなったせいでしょ、という言葉を飲み込む。

 いなくなったのは、このスリッパを持ってきてくれていた為だろうし、『客』としてかばってくれたのは事実なのだ。

 ……『権力』という言葉に並々ならぬ力強さを感じたのは、気のせい?
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