彼女を10日でオトします
 静かな校内に、階段をのぼる私のスリッパの音が響き渡る。
 時折、教室から聞こえてくる先生のくぐもった声。

 他校に、しかも授業中に、イチ生徒の独断でこうやって校内を歩いているわけだけれども。

 私、気づいてしまったの。

 ……この、前を登る生徒会長とやらは、授業に出なくてよろしいのかしら。

 そもそも、授業中に外でばったり会った、ってどういう事なの?
 一体、何をしていたのかしら。

 階段を上りきり、ほうっと息をつく暇もないまま、どん、と目に飛び込んできたものに二の句が継げなくなってしまった。

 扉の横に木の板。そこには、力強い流麗な字で名前が書かれていた。しかも様までついて、この一室を私物化せんばかりの勢い。

 生徒会長は、扉を開けて悠々と入っていく。

 生徒会長の名前なのかしら。これは、新手の自己紹介だったりする?
 ……ちょっとアレな方なのかしら。

 『生徒会長には気をつけた方がいいよ』
 再びヒデさんの忠告が頭の中で再生されるも、時すでに遅し。

 この状況では、その『気をつけた方がいい』人に頼る他ないじゃない。

 重い溜め息を細く吐きながら、その人が入っていった部屋に向かう。

「入れ」

 その短い一言が「苦しゅうない、入ってまいれ」に聞こえてならないのは緊張と不安でおかしくなってしまったせいなのかしら。

 
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