ふりむいて、好きって言って。(仮/旧:三神くんは恋をする)
しばらくするとコーヒーが効き始めたのか、それとも食べ物を食べたことで意識が覚醒しだしたのか、三神くんのシャーペンを握る手が進み始めた。


意外にもスラスラと空欄を埋めていく。


「三神くん、もしかして出来ないフリしてたんですか?」


「んなわけないでしょ。ほんと俺なんで仮進級なんだろ」


はは、と三神くんが笑う。


たぶん、寝てるかサボってるかが原因なんだと思うよ、というのは口にしないでおく。


周知の事実だ。


「篠宮まだそこなの?」


「るせぇ!解けた途端にマウントかよ、いいご身分だな!」


三神くんが篠宮くんの手元を覗き込み、篠宮くんがその顔を睨む。


あれこれ公式集を引っ張り出すものの、どの公式を使うのか分からずにいた篠宮くんは、先程からイライラが止まらないらしく、ギリギリと奥歯を鳴らした。


奥歯が切実に心配だ。


削れたりしないといいけれど。
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