ふりむいて、好きって言って。(仮/旧:三神くんは恋をする)
「……近い」


「は?」


「お前いいんちょーと近すぎ。いいんちょーは皆のいいんちょーだろうが。なんかお前腹立つな」


「えぇ理不尽」


篠宮くんが立ち上がりながら、思いっきり眉根を寄せる。


無理もない。


委員長に誰のものもなければ、三神くんが腹を立てることもひとつもないのに。


確かに篠宮くんと距離は近いけれど、それは篠宮くんが人懐っこいからで……。


「とにかく!喧嘩してないで進めよう。三神くんはその調子で53ページまで終わらせてね。篠宮くんはゆっくりでいいから、公式を理解していこう。分からないところは聞いていいから」


パン、と手を打って、2人を机に向かわせる。


そう、こんなところで躓いている場合じゃないのだ。


1週間後に控えたテストで8割。


これが達成出来なければ、三神くんも篠宮くんも遠足は欠席になってしまう。


現状、2人は基礎問題で3割というところで、限りなく欠席に近い。


本人たちは自覚していないけれど。


「へぇへぇ。ったく、帆貴様様のお考えになることは分からなんな」


そう言いながら篠宮くんが再度ペンを持ち、三神くんも不機嫌そうな顔のまま続く。


私も制服の袖を腕まくりして、2人の答案の丸つけを始めた。
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