ふりむいて、好きって言って。(仮/旧:三神くんは恋をする)
和香ちゃんと篠宮くんは幼稚園の頃からの幼なじみだそうで、和香ちゃんは篠宮くんの扱い方をよく心得ている。


そのせいなのか、小さい頃からずっとクラスが同じらしい。


和香ちゃんに言わせてみれば、篠宮くんが留年からの自主退学コースを免れたのは、和香ちゃんの努力の賜物なんだとか。


「ねぇ、仁がバカかアホかなんていう話はどうでもいいの」


「そんな話してなかっただろ」


「木曜のLHR、遠足の計画立てるらしいよ」


篠宮くんを華麗に無視して和香ちゃんが言った。


そうか、もうそんな時期か。


私たちの学校は親睦会と称して、1年生と2年生は6月に入ってすぐに、クラス単位の遠足が決行される。


近くのアウトドア施設でバーベキューや魚釣りやビンゴ大会や宝探しや……


とにかく一日中、自分たちで立てた計画に則って、自然を満喫できるのだ。


3年生は受験があるから、今年が最後の遠足。


「賞禄黒毛和牛の5時間耐久鬼ごっことかやりたいなぁ」


篠宮くんが食いてぇと呟き、和香ちゃんがそれを軽蔑の目で見る。


「小学生は小学校通えば?」


「どチビはスモックがお似合いだと思うけど」


険悪な雰囲気に、私は慌てて手を挙げる。


「お、鬼ごっこはともかく、バーベキューの具材を賭けたレクレーションはよさそうだね!LHRで検討してみましょう」


提案すると、篠宮くんは目をキラキラさせてこくこくと頷いた。


なんだか犬みたいだ。


でも───
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