ふりむいて、好きって言って。(仮/旧:三神くんは恋をする)
「8割って俺小テストでも取ったことねぇ……」


半ば絶望したというように篠宮くんが肩を落とした。


遠足を1番楽しみにしていると言っても過言ではない篠宮くんに、不参加の3文字は衝撃だったようで、彼は紙飛行機にしていた課題プリントをのろのろとした手つきで伸ばし始めた。


さっきまでキラキラしていた篠宮くんは、すっかり小さくなってしまっている。


志谷先生の言うことは正論だし、篠宮くんもそれを分かっているんだろう。


「よかったら分からないところ教えようか?」


そう提案したのは自然な成り行きだった。


3組からは2名が不参加。


このクラスの委員長として、それは絶対に避けたい案件だ。


「女神……」


「へ?」


ガバッと私を見上げた篠宮くんは、立ち上がって私に歩み寄り、私の両手をたし、と握った。


「いいんちょー、やっぱあんた女神だわ」


そう言って目をうるうるさせるものだから、


「そ、そう……ありがとう……?」


勉強は嫌いではないし、篠宮くんの助けになるならむしろ歓迎だ。


1週間、篠宮くんの学力をあげるべく対策をねらなければ。


「さっさと手離しな、バカ」


「ってぇ、やめろよ余計バカになっちゃうだろ!」


なお私の手を握り続ける篠宮くんの頭を和香ちゃんがノートではたいたことで、また幼なじみ'sの喧嘩が勃発しそうになる。


5限の予鈴が鳴って本戦には至らなかったけど、お互いの間ではぱちぱちと火花が散っていた。


喧嘩するほど仲がいいとは言うけれど、それにしては喧嘩が多すぎる。


ハラハラするやら微笑ましいやら、私の感情はメリーゴーランドだ。


篠宮くんと和香ちゃんが仲良くなれますようにと、そんなことを思いながら、自分の席に戻るために机を離れる。
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