Love Eater Ⅲ
君には……、
君とお嬢さんには幸せになってほしいと思ってますよ。
どの口が言うのだと自分でも思いますが、今となっては切に。
それでも…心配です。
君はお人好しだから。
夜音に似てるから……。
お人好しは……痛い思いをすることが多いのですよ。
あの時だって……、
「夜音は人が良すぎですっ!」
「フフッ、あら、そんなの今に知れたことじゃないでしょう?」
「笑いごとじゃっ……」
「そう、笑い事じゃないわ。こうしている間にも手遅れになってしまうかもしれないもの。急いで準備して出向か…」
「行くだけ無駄だっ!」
冷たい雨の降りしきる夜分だった。
その時居住としていたのはある田舎町の外れで、石造りの狭い小屋であった。
夜音が僕を拾い行動を共にして7年ほどだったか。
夜音は町から町へ、国さえも超えて放浪し難病に苦しむ人間を見つけては〝治療〟して歩く、名目上は医者であった。
それでも常識を超える夜音の治療は良くも悪くも噂となって囁かれ始めていた頃で。
丁度人々の意識の中にも得体のしれない未知のものを魔と称し始めていた頃。
当然、夜音の未知なる力にも良からぬ噂が立つのも必然。
この土地でもそろそろ引き際だと移動を考えていた矢先の出来事。
領主の一人息子が数日前から発熱し、今現在は意識もなく昏睡状態だと。
至急、奇跡と謳われている力で息子を救ってほしいと使いが来た。
医療の発達した現代であれば薬一つで救える病であったのかもしれない。
それでも当時の未発達な医療の知識や技術では確かに救うことは困難。
夜音でしか救えぬものであったのだろうとは思うのだ。