推しが私に噛みつきました。
*
「ひーさのさん」
……パニック、寸前です。
部活が終わって、昇降口に行ったら、守賀先輩がいたのです。
「俺、多分……久野さんにひとめぼれしちゃったんだ」
なんで、名前を知っているのでしょうか。それに……。
「ひとめ、ぼれ、ですが……?私なんかに?」
思わず、本音がぽろぽろ。
「だって、私は、可愛くなくて、冴えなくて。かっこいいところもないし、性格も良くなくて。あと……」
悪いところは、ポンポンと浮かぶのです。
「……でも、久野さんのオーラに惚れたよ」
「惚れ……」
「好きになったってこと」
それは、わかるんですけど……私に惚れる意味がわからないんです。
「部長さんから、名前を聞いたことがあるんだ。期待の新人がいるって話をしてもらって」
「期待の……新人」
その言葉にぱあっと心が明るくなりました。