推しが私に噛みつきました。
「俺が告白したときよりも喜んでる……ヘコむ」
先輩はそう言って顔を逸らしました。
私も、目線をズラします。
……先輩には、言えないですが……告白の意味を知って、爆発してしまいそうだからです。
「……久野さんは、俺の名前知ってる?よね」
その言葉に、ドキリとしました。
まさか、遠巻きから見ていたのに、気づいていたのでしょうか……!?
「さっき、部長が言ってたよね」
なんだ、そのことか、と少し安心しました。
でも、私の存在を認知されていなかったことにはショックです。
「……」
空気が、静かになります。穏やかとはまた違うような気もします。
「ひとめぼれしたんだよ。知っといて」