愛され女子になりたくて
アクシデント

週明け、いつもと同じ様に出勤した。
デスクを拭いて廻り、珈琲を淹れる。
健吾さんは就任と、担当営業の交代の挨拶で暫くは外出が続く。
それが一段落すれば、外出の頻度が減って内勤が増える。
一緒に居られる時間か増えるのは、単純に嬉しい。
やっぱり、健吾さんが好きだから。

今日は大口の営業先の引継ぎで、中野さんと同行だ。

「ハナ、おはよ」

「おはようございます。中野さん」

「今日も一日、頑張ろうな!」

「はい!」

中野さんとはこをなやり取りを、入社した時からしてるな・・・なんてボーッと考えた。

「中野さん、今日の打ち合わせ良いかな?」

健吾さんが、中野さんを連れてミーティングブースに行ってしまった。
部屋では普通に打ち解けられたけど、会社では上司と部下だから・・・どういう接し方をすれば良いか、よくわからない。
距離感が測れなくて、困惑してるって言った方がいいのかな。

健吾さんと同じ部屋で同居している事は、会社では内緒にしておこうと話し合って決めたし。
姉も東海林部長にも、お願いしておいた。
近いうちに引越す部屋が決まったら、住所変更の手続きをすれば良いと、東海林部長も言ってくれたので、今のところ四人しか知らない。

「佐藤さん、土曜日課長とホームセンターに居ませんでした?」

「えっ?」

浅井さんと諸橋さんが、期待に満ちてキラキラした目で見つめてくる。

「私たち、ホームセンターのイベントで見かけたんですよ!お二人が買い物してるところ・・・ね!」

「はい。浅井さんと、偶にお出かけするんです。会社の人を見かけたのは初めてだったんですけど・・・お付き合いされてるんですか?」

「ううん。・・・付き合ってはいないの。引越しをするので、新しい所に必要な物を買い物するのに・・・姉が無理矢理課長に頼んで、クルマを出してもらっただけよ?」

「そう言えば、お姉さんは課長と同期なんですよね。なーんだ、お似合いだったのに」

「はい。すっごくお似合いで、新婚さんみたいでした!」

「イヤイヤ、ないから。課長みたいなイケメンが、私なんか相手にしないよ。姉が強引に頼んだから、一緒に行ってくれただけ」

ヤバい。
想定してなかったわ。
何とか誤魔化せれば、良いけど・・・三人に打ち合わせとかなきゃ。

「でも、引越しってどうしたんですか?」

「近々、姉が結婚する事になってね。姉と同居してたから、単身用の部屋に越そうと思って」

「わぁ、おめでとうございます!でも、寂しいですね・・・」

「そうね・・・。でも、姉が幸せそうだから、いいのよ」

良かった、話題が変わって。
心の中で、ホッと溜息を吐いた。


< 50 / 59 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop