晴れ所により雷雨、所により告白【続編完結】
 私も課長もいつも通りを装ってはいるけど、喉の奥に小骨が引っかかったような違和感やわだかまりがある。

智也のせいで。


肌を重ねれば、このわだかまりは解ける?

そしたら、智也より課長を思ってるって伝えられる?

今日は、食事だけのつもりだったけど、お付き合いしてる男女がお互いの部屋を行き来する以上、そういう日がいつ訪れてもおかしくないことは、私も分かってる。

それ、今日がいいのかもしれない。

私はゼリーを食べながら、そんなことを考えていた。


「じゃあ、そろそろお(いとま)しようかな。
 明日、俺、昔の仲間とテニスするんだけど、
 一緒に来てくれないかな。
 晶のこと、電話でちらっと話したら、
 会いたいから連れてこいって
 言われちゃって。」

「あ、はい。いいですよ。」

紹介… してくれるのかな。

「じゃあ、朝、10時に迎えに来るよ。」

そう言って、課長は立ち上がった。

課長が帰っちゃう。

「あのっ!」

私は思いきって口を開いた。

「何?」

「あの、もし、よければ…
 あの、泊まっていきませんか?」

恥ずかしい…

こんなこと、初めて言った。

私はもう、課長の顔も見られなくて、テーブルの上の空になったゼリーの器をじっと見つめていた。

その時、課長が立ち上がる気配がした。

私の隣に立った課長は、座ったままの私の頭を抱き寄せた。

「ごめん。
 晶にそんなことを言わせて。
 俺のせいだよな。」

私は、課長の腕の中で首を左右に振る。

「でも、今日は帰るよ。」

そう… なんだ…

私、嫌われた?

智也にあんなこと言われた上に、自分から誘うなんて、はしたない女だと思った?

私は込み上げる涙を堪えるのに必死だった。
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