15年目の小さな試練
「……ハル?」

 ハルが言っている事が何なのか、頭のどこかでは理解していた。だけど、久々の満面笑顔のハルを間近に見て、オレは一瞬、我を忘れた。

「見学しに行っても良いって、谷村くん、前に言ってた……よね?」

 ハルはオレの手をきゅっと握り返し、そのまま淳の方に目を向けた。
 淳がこのチャンスを逃すはずはない。ハルというオレの弱点を淳は見事に突いてきた。

「もちろん! いつでも来て? ハルちゃん用の椅子も準備するし!」

「淳!」

 オレは瞬時に表情を硬くして淳を睨みつける。

 だけど、その瞬間、またハルがビクッと震えた。

「ハル、ごめん、大きな声出して」

 慌ててハルに向き直って謝ると、ハルはとても困った顔をしていた。

「……あの、ごめんね、カナ。そんなに嫌なら、わたし……」

 困った顔と言うより、泣きそうな顔と言うか、とにかくハルはすごく悲しそうに、小さな声で先を続けようとしたのだけど……。

「ああ、ごめん、ハル! 全然、大丈夫だから! ハルが見たいなら、練習見るくらい、いつでも大丈夫だから!」

 気が付くと、オレはハルの指先のイチゴごと、ハルの両手を包み込み、ハルの好きなようにすればいいと口にしていた。

 隣の淳はしばらくの間、オレがハルを慰めるのを見守った後、徐に言った。

「練習さ、月・水・金なんだけど、いつ来る?」


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