15年目の小さな試練
「頼むよ、叶太~」

「嫌だって言ってるだろ」

 オレは基本的に社交的な方だと思ってる。

 誰とでも仲良く話せた方が色々楽だし、何より、オレが誰かから恨みを買ってハルに危害を加えられるようなことは絶対避けたいし。

 だからって、こういう無理強いは嫌いだ。

 オレからハルとの時間を奪うとか、あり得ないだろ?

「他を当たれよ。探せば黒帯の一人や二人いるだろ」

 思わず冷たい声で突き放すように言うと、またしてもハルが固まった。
 デザートのイチゴをつまんだハルの手が空中で止まっている。

 ごめん。ハルに怒ったんじゃないよ?

 そう伝えたくて、オレは慌ててイチゴを持っていない方のハルの手を握る。

「……えっと、カナ?」

「ん? どうした?」

 淳と話している時の十倍くらい甘い声になってる自覚はある。
 それを聞いて、ハルが数度瞬きした。

「あのね、……一度、行って来たら?」

 ハル、それってどういう意味?

 話の流れから、分からなくもない。だけど、一応聞いてみた。

「……どこに?」

 忌々しい事に、淳の嬉しそうな顔が目の端に見えた。

「えっと、空手部の……練習?」

 小首を傾げてオレの目をじっと見つめるハル。

 ダメだよ、ハル、そんな顔で見られたら、オレ、どんな我がまま言われても聞いてしまう自信があるんだから!

 だけど、オレの心の声など知らないハルは、オレの目を見てふわぁっと蕾が花開くように優しく笑った。

「わたし、見てみたいな」

「……え?」

「カナが空手するところ」
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