15年目の小さな試練
 自宅から通っているからか、田尻さんと幸田くんもお弁当持参。

 珍しいメンバーでお弁当を食べながら、おしゃべりをする。

 カナと田尻さんがまともに話すのって、何年ぶりだろう? その昔……初等部と中等部の一年生まで、同じバスケ部にいた二人は、元々は割と仲が良かったはずだ。

 それが一転、高一の春以降、ほとんど会話がなくなっていた。なのに今、その二人が同じテーブルを囲んでいる。

 何だか、とっても不思議な感じ。

 でも、わだかまりさえ消えたら、元々が長く同じ学校に通う仲間だから、自然と会話は弾むみたい。
 高等部のクラスメイトが、今、どんな感じかとか、また同窓会しようとか、そんな話が通り過ぎていく。

 わたしはほとんど聞くだけで、三人の会話を楽しみながら、ゆっくりとお弁当を食べていた。

「……ね、大丈夫? 体調、あんまり良くない?」

 不意に、田尻さんがわたしの方を見た。

「え?」

 驚いてお箸を持つ手を止める。

「あの、体調、悪くないよ?」

 特別良くはないけど、悪くもない。

 ……わたし、そんなに疲れた顔をしていたかな?

「えーっと、だったらいいんだけど。牧村さん、全然しゃべらないし」

 ああ、そうかとホッとする。

「わたし、食べるの遅いから。おしゃべりしてると、午後の授業に間に合わなくなっちゃうの」

 微笑んで答えると、田尻さんは、

「ああ、なるほどね。そっか、ならいいんだけど」

 と安心したように表情を緩めた。
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