15年目の小さな試練
 あの日、校舎の裏に倒れていたわたしを見つけてくれたのはカナで、救急車を呼んでくれたのもカナだった。後、一時間発見が遅れていたら命はなかったかも知れないと言われるくらいには、良くない状態で、カナには相当心労をかけたと思う。

 田尻さんを起点としたすれ違いもあって、一時は、カナとはもう終わりかと言うところまで行ってしまった。

 しーちゃんも何となく、田尻さんをわたしに近付けないようにしていた感があったし、高等部時代は、カナやしーちゃんがいるところでは田尻さんと話さないようにしてきた。

 そんな空気は当然、田尻さんにも伝わっていて、田尻さんもカナやしーちゃんがいる時にはわたしの側に来ることはなかった。



 だけど、今、そんなことは全く知らない幸田くんの言葉で、田尻さんは意図せず、カナも同席する状態で、一緒にお昼ご飯を食べることになっていた。
 そんな訳で、田尻さんは微妙な表情。

 お邪魔してもいいのかな、という言葉に

「もちろん」

 と、わたしは笑顔で答えて、自分の隣の椅子に置いてあった鞄を床に下ろす。
 カナもわたしが荷物を動かすのと同時に、

「どうぞ」

 と笑顔を返した。

 ……あれ?

 カナの笑顔には何の含みも感じられない。

 今までにない反応に驚いている間に、多分、カナと田尻さんの間の確執を全く知らない幸田くんが、

「ありがと。ホント助かったー!」

 と言いながら、カナの隣の椅子を勢いよく引き、ドカッと腰かけた。

「お邪魔しまーす」

 田尻さんもわたしの隣にやって来て、こちらはそっと席に着いた。
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