15年目の小さな試練
 家を出てガレージから自転車を出していると、じいちゃんが裏の家から歩いてくるのが見えた。

「じいちゃん、おはよう!」

「おはよう、カナくん」

 手を振って挨拶すると、じいちゃんはニッコリ笑って、オレのところにやって来た。

「今日は自転車か」

「うん。天気もいいし、一人なら自転車の距離だよね」

「大学の方は坂がきつくないかい?」

「ちょうどいいトレーニング!」

 と言うと、じいちゃんは声を上げて笑った。

「カナくんは元気だね。まあ若い時に身体を鍛えておくのはいいことだ。でも、くれぐれも車には気を付けるんだよ?」

「了解!」

 じいちゃんは家には入らず、オレを見送ってくれるつもりらしい。

「じゃあ行ってきます。ハルのこと、よろしくね?」

「ああ、任せなさい。気を付けて行っておいで」

 門を開けて外へ出ると、じいちゃんが「閉めておくから」と門に手をかけた。

「ありがとう!」

 オレはじいちゃんに手を振って、自転車のペダルを踏み込んだ。



    ☆    ☆    ☆



「あれ、奥さん、休み?」

 火曜日の二限目はハルが好きな山野先生の演習の授業。

 5月からグループワークが始まっていて、席は班ごとに分かれている。オレ一人で自分の班の島に行くと、すでに来ていた海堂達己(かいどうたつき)に声をかけられた。
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