15年目の小さな試練
「ホント?」

 嬉しそうにそう言って、ハルはオレがデイパックを開けるのを待つ。

 ってかさ、やっぱり嬉しいんだよな?

 正直、体調崩して休んでるって伝えてるのに次の課題を渡されて、オレは少し驚いたんだ。ハルに結構重い持病があるのは事前に話が通っている訳だし。

 だけど、ハルが嬉しそうに課題が出てくるのを待っているのを見ると、そんな言葉は言いにくい訳で……。

「はい、これ」

 結局、オレは何も言わずに預かった課題をハルに渡した。

「今日渡したのも、その場でザッと見てくれたんだけど、よく書けてるって言ってたよ」

「よかったぁ」

 ハルはホッととしたように胸に手を当て、ふわりと微笑んだ。

「で、先生から伝言。無理はしなくていいけど、できたらやってみてって。期待してるわね……だって」

「うん。頑張るね」

 ハルは早速、課題のプリントをめくり始めた。

 そもそも、渡される課題の量が違う。オレを含めた他の学生が渡されるのが三、四枚つづりだとしたら、ハルのは十二枚つづりだ。枚数だけが問題じゃないとは思うけど、3~4倍ってのは、やっぱり普通じゃないと思う。

 だけど、ハルはその課題を読むのすら面白いようで、今渡したばかりの課題も、もう二ページ目を読んでいる。
 何て言うか、すごいスピード。全く付いて行けない。これは、ハルの趣味が元々読書だからかも知れないけど。

「ハル、読むなら座ろう?」

「……ん」

 デスクの椅子を引き、促すと、ハルは半ば上の空のまま、オレに背を押されて椅子に腰を下ろした。

 結局、夕飯の時間が来るまで、ハルがデスクを離れることはなく、仕方なく、オレも隣でもらってきたばかりの課題を片付けることにしたのだった。


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