15年目の小さな試練
 今日の夕飯は、沙代さんお手製の肉じゃがコロッケ。それから、たっぷりの千切りキャベツと具だくさんのお味噌汁。付け合わせはひじきの煮物。

 だけど、ハルは食欲がないみたいで、卵雑炊を食べていた。コロッケを食べられるほどではないけど、雑炊なら躊躇なく口にできている。体調もそこまで悪くはなさそうでホッと胸をなでおろした。

「あ、そうだ」

「ん? なあに?」

「あのさ、山野先生の授業、来週から二週連続のワークになるって」

「二週連続?」

 ハルは雑炊をすくうレンゲを止めて、オレ顔を見て小首を傾げた。

「うん。今、九十分の授業の中で、軽く説明聞いて、ディスカッションして答えを出して、どこか1~2グループが発表するでしょ?」

 ハルは小さく頷いた。

「来週から、最初の週はディスカッションだけで、二週目に発表準備と全グループ発表と講評になるんだって」

 ハルは驚いたように数度瞬きした。

「……ディスカッションの時間が長くなるのかな?」

「ああ、うん。それがさ、なかなか一日目だけでは終わらなくて、結局、放課後に集まって話すことになるっぽい」

 先生の、終わらなければ集まってでも片付けるように、というような言葉に、ちょっと教室がざわついた。うちの班はけっこう仲がいいと思うけど、そうでもない班もあるみたいだから、放課後に集まってと言うのは複雑な学生もいるだろう。

「放課後かぁ」

 ハルは小さくため息を吐いた。

 みっちり一日講義を受けた後での課外活動。ハルには重荷だよな。

「無理のない程度に参加しよう」

 そっとハルを抱き寄せると、腕の中のハルは小さな声で、

「頑張るね」

 と言った。

「頑張り過ぎちゃダメだよ」

「……うん」
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