15年目の小さな試練
「それなら、高校の時とか、たまに言われてたよ」

 カナもにっこり笑ってそう言った。

 本当に? わたし、聞いた事ないんだけど……。

「叶太くん、なんかハルちゃん、変な顔してるんだけどー」

 柚希ちゃんの言葉に慌てて、言葉を紡ぐ。

「え? あの、変な顔って言うか……。ただ、そんな風に言われたこと、ない気がするんだけど……って思ってただけで」

 首を傾げると、カナはくすくす笑った。

「ハルの前では言わなかったかもな。でも、言われてたよ」

「うん。確かに癒し系かも」

 海堂くんが言い、美香ちゃんも続けた。

「そうだね。癒し系のがピッタリだよね。……でもさ、こんなフワフワして女の子らしくて、癒し系なのに、超絶頭が良いとか、ヤバくない?」

 頭がいいんじゃなくて、ただ予習していたから、みんなより進んでいるだけなのだけど……。

 そう言いたかったけど、天然とか癒し系とか頭が良いとか、なんか、自分を話題にされている状況に慣れなくて、会話に入っていけない。

 思えば、高校までは幼稚部や初等部、中等部からの持ち上がりの子が周りにたくさんいて、こんな風に誰がどうだとか、話すことはあまりなかった気がする。大体、みんな知り合いだったし。

「ホント、ハルちゃん、頭いいよな? 同じ一年とは思えないし」

「山野先生の課題、ハルちゃんだけ次元が違う問題もらってるでしょ? あれ見せてもらって、私、本当に驚いたもん」

 カナはわたしが困っているのに気が付いて、苦笑いしながら、まだ湯気が立っている紅茶を飲むように身振りで勧めてくれた。
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