15年目の小さな試練
「いや、本城がハルちゃんは天然って言うから、天然じゃないと思うんだけど、じゃあなんだろうって話をしてたんだけど」

 カナに状況を説明してくれたのは海堂くん。

 放課後に集まるのは初めてだけど、5月から始まったグループワークで何度も一緒に課題をこなしていて、みんな結構仲がいい。とは言っても、授業中のワークでしか話していないから、みんなのプライベートなんかは全然知らないのだけど。

「ハルが?」

「うん。ハルちゃんって、ものすごく頭良いよねって。でもって、天然だよねって思ったんだけど」

 柚希ちゃんがカナに説明する。

 ……そもそも、天然ってどんな意味だっけ? ちょっと普通とは違う行動をする人?

 あんまりいい意味じゃないよね?

 ……わたし、そんな変なこと言ってた?

 会話をする場が授業中で、話す内容がほとんどグループワークでの議論だけに、何かおかしなことをしでかしたかと思って、ドキッとして柚希ちゃんを見てしまった。

「いや、天然とは違うでしょ。そうじゃなくてさ、何ていうの、ほら……」

 河野くんはまた、わたしの天然説を否定してくれていた。

 人が人をどう思うかなんて、見られる側から指定できるものではない。だから、どう思われていても仕方ないと思うのだけど、それでも、変な風に思われていなかったらいいなとは思ってしまう。

 河野くんの言葉を受けて、

「癒し系?」

 カナが言うと、

「そう、それ!」

 と河野くんはポンと手を叩いて、にこりと笑った。
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