15年目の小さな試練
 そんな充実した時間を過ごした日の深夜、オレは

「……う……んん」

 ハルの声で目が覚めた。

「……ハル?」

 ハルの体調が良くない時は二つ並べた隣のベッドに寝る。具合が悪い時は一人で寝たいだろうから。だけど、元気な時は同じ布団にくるまって寝ることにしているんだ。

 最近は一人で寝かせてあげた方が良いのかどうか、迷う日が多い。

 それでも、今日は同じベッドにお邪魔した。ハルは先に寝ていて、オレが寝ようとした時には、スヤスヤと気持ちよさそうな寝息を立てていたから。

 なのに、そのハルが今は寝苦しそうに身じろぎし、うめき声を上げていた。

「ハル、……ハル、大丈夫? ……ハル」

 何度か声をかけると、ハルはうっすらと目を開いた。

「大丈夫? うなされてたみたいだけど」

 って言うか、あんまり大丈夫じゃなさそうな気がする。
 やけに息苦しそうだし。

 額に手を当てると、案の定、熱かった。
 ちゃんと計った方がいい気がする。

「熱、ありそうだね。ちょっと待っててね」

 体温計を取ってこようと身体を起こすと、ハルがパジャマの裾を掴んで引っ張った。

「ハル?」

「……行かないで」

 ささやくように、ハルは言った。

 可愛い!

 そんなことを思っている場合ではないのに、珍しく甘えてきたハルに目も耳も奪われる。

「どうした? 嫌な夢でも見た?」

 そのまま、思わず抱きしめると、やっぱり、全身があったかい。いや、あったかいと言うか熱い。明らかに発熱している。
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