15年目の小さな試練
 話しちゃったんだ。

 ズシンと心が重くなるのを感じた。

 思ったより、ダメージが大きいことに驚く。
 この病気とは生まれた時からのお付き合いだし、高校までの同級生は、病名まで詳しくは知らない人でも、わたしに持病があることは多分よく知っていた。

 だけど、大学で新しく一緒になった人たちは、わたしの身体が恐ろしいほどに虚弱で軟弱なことをほとんど知らない。

 でも、周りの人が知らないからって、病気がなくなる訳ではない。そんな事、当たり前なのに……。

「相談なく勝手に話して、ごめんね」

「ううん。知っておいてもらった方がいいし……」

 これからの季節、今まで以上にわたしのお休みは増えるから、同じ班の人たちにはきっと迷惑をかけてしまう。だから、知っておいてもらった方がいいのは間違いない。

 そう頭では分かっているのに……。

 なんでこんなに嫌だって、思っちゃうのかな?

 カナにはわたしの気持ち、筒抜けだったのかな。カナは優しい笑顔を浮かべるとベッドに腰掛け、そっとわたしを抱きしめた。

 反射的にカナの背中に手を回すと、カナはそのまま、背中をトントン、トントンとあやすように叩く。

「ハル、大好きだよ」

 カナが耳元でささやく。

「……わたしも」

 小さな声でそう応えると、カナは嬉しそうに笑った。

 わたしを包み込むカナの気持ちが暖かい。カナは多分、わたしがどんなことを考えていても、何を言っても受け入れてくれる。それが触れ合った肌越しに伝わってくる。
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