15年目の小さな試練
 普通じゃないってことを知られたくないの、かな、わたし……。

 それに、お見舞いに気が乗らないのは、弱ったところを見せたくない。ってことなんだよね、多分。
 どうあっても、わたしが弱すぎることは変わらないのだけど、それでも学校では、みんなと同じように笑って、おしゃべりして、講義受けて、課題やって、……そんな姿だけを見てもらいたい、のかも知れない。

 そんなの、無理だと分かってる。

 もう何度も休んだし、授業中に体調を崩して早退した。
 わたしの虚弱さなんて、みんな、もう知っている。

 それでも、心のどこかかで、せめて体調を崩して臥せっているような状態は、できる限り見られたくないと願っている自分がいる。

 ……だけど、もう少し、自分を受け入れた方が良いのかも知れない。

 カナはわたしの髪をすくように頭をなで、頬にキスを落とす。
 今朝ようやく酸素マスクも取れた。カナのぬくもりを阻むものはない。

 弱り切った姿はやっぱり見せたくない。

 だけど、退院直前の様子見の時とか、復学直前の自宅療養の時とか、それくらいなら良いのかも知れない。

「あのね」

「ん?」

 ……目の前にある現実を、受け入れよう。

「もう少し元気になって、点滴とか、全部外れてるときなら」

 そう伝えると、

「え!? いいの!?」

 カナは驚いたように身体を離し、声を上げた。

「しーちゃんは割と抜き打ちで来るし」

 そう言うと、カナはクスッと笑った。

「あ~、志穂はね~」

 来てくれたからと言って、本当に調子が悪いときは会えないのだけど。それでも、しーちゃんは気にせずに訪ねてくるんだ。

 付き合いが長いせいで、救急搬送されるような時も何度も見られているからか、わたしも若干諦めの境地で、しーちゃんと斎藤くんなら、あまり抵抗感を覚えなくなっていた。

 だけど、いつまでも二人だけじゃ、ダメだよね。

「……新しい友だちも、作らなきゃ、ね」

 そう言うと、カナはわたしの頭をぐりぐりとなでまわした。

「卒業までの四年間。長いつきあいになりそうだしな」

 カナの言葉にわたしも笑顔を返した。
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