15年目の小さな試練
「まあなんだ。……あんまり、束縛すると、お前、ハルちゃんに嫌がられるぞ」

「え!? いや! 束縛とかじゃないし!」

「心配も過ぎれば、束縛と同じようなもんだよ」

「いやいやいや、ちょっと待ってよ、兄貴!!」

 必死で否定する叶太は可愛いが、身内のひいき目で見ても、叶太のそれは、かなりの過保護で束縛にも通じるものがある。

「ああでも、まあ束縛とは違うかな」

 叶太の場合、無理させないようにはするけど、それ以上に何かするわけではない。

 けど……

「お前、ほっといたら二十四時間、365日、ハルちゃんに張り付いてるだろ?」

 俺の言葉に叶太は一瞬言葉を失う。

 うん。普通引くよな。

「……いや否定はしないけど、ね?」

 でも否定はしないんだ?

 思わず吹き出し、忠告する。

「少しはそれぞれに自分の時間を持っとけ」

 いや、それぞれと言うか、叶太がって話かも知れないけど。

「いや、でも今までだって、土日のどっちかで道場行ってたし」

「長くて半日? 週に数時間かな?」

「いや、後、朝は外に走りに行ってるし」

「一時間くらいな。しかも、ハルちゃん、まだ寝てるだろ」

 笑いながら答えると叶太は黙り込んだ。

「取りあえず、明日、ハルちゃんが元気だったら決行。体調が悪かったら休み。後、病み上がりのハルちゃんに無理はさせないから、安心して」

「ええ~」

「ハルちゃんに嫌われたくなかったら、おまえは空手行ってこい」

「ええぇっ!? そりゃ、嫌われたくはないけど! なんで嫌われたくなかったら、空手行かなきゃいけないの? そこ、繋がりないでしょ?」
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