15年目の小さな試練
それからそっと腕を抜いた。
その動作でハルが目を覚まさないのを確認してから、ゆっくりとベッドから抜け出して、布団を整える。
「おやすみ、ハル」
もう一度、キスをして、少し迷った後、ソファベッドからタオルケットを取ってきて肩からかぶると、ハルの枕元のイスに腰を下ろした。
「嫌な夢を見たら起こしてね」
そう言って、ハルの手を握り、オレのためにハルが開けてくれたスペースに腕を置いてうつ伏せる。
これなら怒られることも、呆れられることもないだろう。
ハルの容態が悪くて心配なときは、ソファベッドで寝る気になんてなれなくて、このイスで、ハルの様子を見ながら仮眠を取るのだから。
今はハルの体調は落ち着いている。だけど、こんな日があったっていいだろう?
「甘えてくれて、ありがとう」
ハルはきっと、頼ってもらえて、甘えてもらえて、オレがどんなに喜んでいるかを知らない。
ねえ、ハル。
これからも、オレは色々間違えると思う。今回みたいに、見極めを失敗することもあると思う。
だけど、ハルを愛する気持ちは誰にも負けないよ?
ハルが一番望む形にしてあげたいと思う気持ちにウソはないよ?
弱音を吐かないハル、誰にも甘えないハル。
だけど、オレには少しずつ甘えてくれるようになった気がする。
オレにはもっと甘えていい。もっと甘えて、頼って欲しい。男として、夫として当然の気持ち。
……ごめんね。病院のベッドでは、一緒に寝られないけど。
「これからも、よろしくね」
そう言うと返事でもするかのように、ハルの手がピクリと震えた。
オレはその指先にキスをすると、そのままハルとの明日を夢見て眠りの世界に飛び込んだ。
(完)
その動作でハルが目を覚まさないのを確認してから、ゆっくりとベッドから抜け出して、布団を整える。
「おやすみ、ハル」
もう一度、キスをして、少し迷った後、ソファベッドからタオルケットを取ってきて肩からかぶると、ハルの枕元のイスに腰を下ろした。
「嫌な夢を見たら起こしてね」
そう言って、ハルの手を握り、オレのためにハルが開けてくれたスペースに腕を置いてうつ伏せる。
これなら怒られることも、呆れられることもないだろう。
ハルの容態が悪くて心配なときは、ソファベッドで寝る気になんてなれなくて、このイスで、ハルの様子を見ながら仮眠を取るのだから。
今はハルの体調は落ち着いている。だけど、こんな日があったっていいだろう?
「甘えてくれて、ありがとう」
ハルはきっと、頼ってもらえて、甘えてもらえて、オレがどんなに喜んでいるかを知らない。
ねえ、ハル。
これからも、オレは色々間違えると思う。今回みたいに、見極めを失敗することもあると思う。
だけど、ハルを愛する気持ちは誰にも負けないよ?
ハルが一番望む形にしてあげたいと思う気持ちにウソはないよ?
弱音を吐かないハル、誰にも甘えないハル。
だけど、オレには少しずつ甘えてくれるようになった気がする。
オレにはもっと甘えていい。もっと甘えて、頼って欲しい。男として、夫として当然の気持ち。
……ごめんね。病院のベッドでは、一緒に寝られないけど。
「これからも、よろしくね」
そう言うと返事でもするかのように、ハルの手がピクリと震えた。
オレはその指先にキスをすると、そのままハルとの明日を夢見て眠りの世界に飛び込んだ。
(完)