15年目の小さな試練

 翌日、実家からお袋に送ってもらってオレは病院を受診した。日曜日だから、行ったのは救急診療窓口。

 38度程度の熱くらい寝てれば直ると思う。だけど、少しでも早くハルの側に戻りたいと思えば、医者でも薬でも頼りたくなるのは当然だろ?
 結婚前なら、さすがに一日くらいは様子を見て、月曜日の通常診療の時間に受診したと思う。だけど、何というか、今はホント、一分一秒たりともハルと離れていたくないんだ。

 と思って、ただ風邪薬と解熱剤でももらって帰るはずが、念のためにと幾つも検査をされた。変なウィルスだったりしたら大変だからって。
 潜伏期間が長いものだったりしたらハルに万が一移っている可能性も考えなきゃいけないからと言われて、肝が冷える。

 今日受診して良かった!

 だけど、当然オレはただの風邪のはずで……。

「インフルエンザA型ですね」

「ウソだろ!?」

 反射的に声を上げると、研修医のバッチをつけた医者が苦笑を浮かべた。

「残念ながら陽性です」

「マジか〜!」

 ようやく、大学での生活も軌道に乗りかけた5月頭、GWの最終日。入学して、一ヶ月と少し。
 初めての大学生活に身も心も疲れ気味のハルのため、GWは二人してゆっくり身体を休めた。だから、GW明けからはまた元気にお勉強、となるはずだったのに!
 GWの終わり、オレはなぜか季節を大幅に外したインフルエンザを発症したらしい。

 一体、どこで拾った!?

 周りでインフルエンザを発症した友人なんていない。ハルの通院には付き合うから病院には行くけど、今の時期に待合室にインフル患者が溢れているなんて考えられない。
 休み中にオレが一人で外に出たのは空手の練習くらい。帰りに淳と昼ご飯食べて……。

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