15年目の小さな試練
 二限終了後、ハルちゃんを迎えに行くと既に教室のドアが開いていて、学生たちが移動しを始めていた。ギリギリ間に合ったかな?

 前の授業が昼休み前だからって少し早めに終わってくれる先生で助かった。

「あ、まただ」

 ハルちゃんと一緒に出てきて「また」の言葉を発したのは、一限の後の女の子。

「あのね、えみちゃん」

 ハルちゃんは困った誤解を解こうと、えみちゃんというらしい彼女に声をかける。

「えっと、……カナのお兄さんです」

「え?」

 驚いて目を大きく見開いて俺を見たえみちゃんに笑いかける。

「はじめまして、は微妙に違うかな。叶太の兄です。いつも弟と義妹がお世話になってます」

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