15年目の小さな試練
「では、グループワークに入ります」

 今日の課題の説明の後はいよいよグループワーク。学生たちが一斉に机を班の形に移動し始める。実習助手をしている院生も一斉に教室の中ほどに移動する。俺はさり気なくハルちゃんのいるグループの近くに陣取った。

 一気に教室内がにぎやかになる。

 火曜日の午前中、一限と二限続けての長時間授業。最後には班ごとに発表と講評もあるせいか、結構、緊張感もある。

 ホント、懐かしい。

 一度決まった班は半期同じ。仲が良ければ楽しいけど、悪ければ、かなり辛いのも演習の特徴。叶太がいなくて、今日は5人のハルちゃんの班は、和気あいあいと楽しそうに進められている。

 二年の前期まではクラス全体での演習を行い、二年後期からは、少人数のゼミになる。この一年半で、自分が何を専門に勉強するか、どの先生の研究室に入りたいかを考える必要もある。……なんてこと、まだ、ここにいる学生は意識していないかも知れないけど。

 ハルちゃんと叶太はどの研究室を選ぶのだろう?

 人気の研究室は、成績優秀かつ先生の覚えがめでたくなければダメだって、叶太に言っとかなきゃな。どうせ、あいつはハルちゃんと同じところを希望するだろうし。

 複数グループの進捗状況を見て、たまにアドバイスなども挟みながら、ハルちゃんの様子をそっと観察。

 ハルちゃんは前に出るタイプではなかった。それは予想通り。だけど、丁寧に人の話を聞き、時間に目を配り、ふとした瞬間、キーとなる言葉を言う。それで場の流れが変わる。そんなシーンを二回見た。
< 72 / 341 >

この作品をシェア

pagetop