15年目の小さな試練
 ハルちゃんのパソコンのセッティングと使い方のレクチャー終了後、早速、叶太に電話をした。

「叶太? 今、ハルちゃんのパソコンからリクエスト送ったから、承認して」

「え? 兄貴、突然何の話?」

「俺ね、今、ハルちゃんちにいるの」

「え!? うちに!?」

 その言葉に、そうか、叶太の家はもうここなんだと、妙にしんみり実感する。

「ハルちゃんがお前の顔が見られなくて寂しいって言うから、スマホじゃなくてもパソコンでビデオ通話できるよ……て事で設定して、使い方をレクチャーしたとこ」

「え!? マジで!? ハルの顔見られるの!?」

 喜びに満ちあふれた叶太の声に頬がゆるむ。いやホント、期待を裏切らないよね。

「待ってて! すぐ承認するから! ……終わった!」

「よし。じゃあ、パソコンから繋ぐから、切るな」

「うん! 兄貴、ありがとう!」

 電話を切ると、ハルちゃんに向き直って、頷いてみせる。

「それじゃあ、繋いでみよっか」

「はい」

「よし。じゃあ、さっき言った通りにやってみて」

 ハルちゃんは迷うことなく、俺が教えた通りに操作する。コール音をほとんど鳴らすことなく通話モードになった。

 ほどなく映像が表示されると、ハルちゃんは満面の笑みを浮かべた。

「カナ!」

「ハル~!」

 お互いの顔を食い入るように見つめ合う二人に、妙な感動を覚えた。

「……カナ、大丈夫?」

「ん? 元気だよ」

 うん。俺と話す時の数倍は声も表情も明るく弾んでる。と思うのだけど、ハルちゃんは心配そうに続けた。

「でも、なんかやつれた気がする」

「ああ、こんなの貼ってるから、そう見えるんじゃない?」

 叶太は笑っておでこのジェルシートを指さした。
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