15年目の小さな試練
 夕ご飯を食べ終わった頃、カナから電話がかかってきた。
 昨日の夜以来、ちょうど二十四時間ぶりになる。

 カナがお義母さまにスマホとパソコンを取り上げられる前も、電話は大体一日一回だった。だけど、メールは何回も届いていた。今は、それもない。

「ハル? 元気?」

「うん。カナは? もう熱はない?」

「すっかり平熱。今は、人に移さないように謹慎中なだけだから、ホント元気だよ」

 確かに、熱があると言っていた時と比べて、声に力がある気がする。

「ね、ハル、おねだりしていい?」

「ん? なあに?」

 珍しいなと思っていると、カナは嬉しそうに、

「顔見て話したいな」

 と言った。

 あ、そっか。
 パソコンだったら、ビデオ通話ができるんだった。

「うん、そうだね。……じゃあ、パソコンのところに行ってかけなおすから、ちょっと待っててね?」

「分かった! あ、慌てないでいいからね? ゆっくりね?」

 カナは相変わらず心配性だ。

「うん、大丈夫。じゃあ、後でね」

 電話を切って、居間から自分の部屋に移動する。

「あら、お嬢さま、もうおしまいですか?」

 片付け物をしていた沙代さんが不思議そうに聞いてきた。

「あのね、お部屋のパソコンで話をするの。そうしたら、カナの顔が見えるから」

「あら、それは良いですね。夜は冷えますから、上着を羽織って下さいね?」

 沙代さんはそう言いながら、にっこりと笑う。

「はーい」

 部屋に入るとカーディガンを羽織って、それからパソコンの電源を入れた。
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