秋の魔法
僕は放課後、図書館に来ていた。今日一日、僕のもう1つの人格、雪羽は出てきていない。
「……あ、先輩!」
僕の目の前に先輩が現れた。先輩は僕に近寄ってくると「あ、来てくれたんだ」と微笑んだ。
次の瞬間、僕の意識は途切れた――がこれは夢の中なので僕はその光景を見続ける。雪羽と交代している時の僕を雪羽と呼ぶことにしよう。
「……あんた、誰?」
雪羽は先輩を見つめて首を傾げた。先輩は雪羽の言葉に固まる。
「…あ、秋羽の知り合い?俺は秋羽であって秋羽じゃない」
雪羽はそう言って微笑んだ。先輩は戸惑うばかり。
「初めまして。俺は紅桜 雪羽。秋羽のもう1つの人格だよ」
ニコニコ笑いながら雪羽は言う。先輩は「…二重人格…なの?」と問いかけた。雪羽は無言でうなずく。
「…そうなんだ。えっと、僕は魔法学校2年生の近藤 美影。よろしくね」
先輩は雪羽に笑いかける。雪羽は「よろしくー」と答えた。先輩は、雪羽の胸に手を乗せる。
「――1つの身体に2つの心が宿りし者よ。今、我が魔力に従い、我の前に姿を見せよ」
先輩がそう唱えた時、僕らの体が2つに分かれた。あの時、記憶にあったのはここからだ。
「……こ、これは?」
戸惑う僕らに先輩は「これは『人格分裂魔法』って言って、その名の通りに人格を分けて別人格を具現化する魔法なんだ」と説明してくれた。
「まぁ、この魔法は授業でやらないし…魔導書には乗っているけど。でも、秋羽と雪羽なら覚えておいて損はないと思う…で、本来の人格はどっちなの?」
「あ、僕です」
オレンジ1色の瞳の僕は手を挙げながら言った。この日、僕は新しい魔法を教えてもらった。