秋の魔法
「僕は泣いたことが無いから分からない。涙を流して何の意味があるのかすら分からない」

「……意味はちゃんとあるよ。あくまで僕の意見だけど、涙を流すと少し心が軽くなるんだ…」

「……軽くなる…か。イマイチ分からないや。雪――」

ズキりと父に殴られたところが不意に痛み、僕はしゃがみ込んだ。

「いった…」

「大丈夫?」

先輩はしゃがみ込んだ僕の目の前にしゃがんだ。そして「立てそう?」と僕の肩に手を乗せる。

「…っ!!」

その時、僕の脳裏に父に殴られている時のことが映った。

「……い、たい…よ。た、すけ…て」

僕は油断していた。気が付いたら、先輩は僕の制服の袖を捲りあげている。

「……先輩!何しているんですか!」

僕は慌てて先輩から離れ、腕を抑える。

「ご、ごめん…まさかと思っていたけど、その傷は?」

「……先輩には関係ありません!」

「…もしかして、虐待を受けてるの?」

「先輩、僕のことにいちいち首を突っ込まないでよ!僕の気持ちなんて全然知らないくせに!!」

先輩は「……ごめん、なさい」と言いながら震えている。その様子に雪羽は驚いた。

「……美影さん、何に怖がってるの?」

「僕の、せいだ……僕が余計なことをしたから…」

先輩は恐怖で埋め尽くされた目で僕を見つめた。まるで家にいる時の僕と同じ目をしている。

ん?家にいる時の僕と同じ目?

「……先輩。もしかして…先輩も虐待を…?」

僕はいつもの調子で問いかけた。先輩は「うん。受けていたんだ…僕の場合は暴言中心だったけど」と言った。

そして、僕に今までのことを話してくれた。僕も話そうと覚悟を決め、先輩に全てを話した。

父から暴力を受けていること、母は見て見ぬフリをしていることなどを。
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