異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「エドガーさん、フェルネマータってどんな国?」
「この大陸の最北端にある雪国だよ。ガラス工芸が盛んなんだ」
「そうなんだ。他にもこの大陸には国があるの?」
「え? それはもちろん」
そんなことも知らないのか、とばかりに目を丸くするエドガーさんに今度は私のほうが気まずくなる。
けれども、なにか事情があると察してくれたのか、この世界のことを話してくれた。
私のいるこの大陸はバルドさん率いる騎士団が守る東のパンターニュ王国、野心家の皇帝が治める西のベルテン帝国、北の雪国フェルネマータ、南国カイエンスの四つの国から成る。
別大陸にも国があるらしいのだが、やっぱりどれも耳にしたこのとない国名だった。
「雪さんはどこの出身なの? ……って、答えにくかったらいいよ。誰にも話せないことのひとつやふたつ、あるだろうから」
エドガーさんは先回りするようにそう言ってくれるけれど、私だけ素性を明かさないのは失礼だ。
ただ、日本から来たと話したところできっと信じてもらえない。
どう打ち明ければいいのか迷って、考えても答えが出なかった私はダメもとで素直に自分の身に起きた出来事を伝えることにした。