異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「僕は店主のオリヴィエ・リックベルです。お客さん、なにを探してるんですか?」
ベージュのシャツにストライプの入った茶色のベストとズボン姿の彼は、笑ってはいるが目の奥が鋭い。
「わ、若いのに店主をしてるんだ。すごいんだね」
声をかけられたのに返事をしないのも感じが悪いので、当たり障りない話を振るとオリヴィエの瞳が冷たくなった気がした。
「商才に年齢なんて関係ありますかね? それで、今日はなにをお求めですか」
「あっ、トマトと玉ねぎ、それから豚ロースはありますか? あとは米……ライスも……」
当たりがきつい。
私はオリヴィエの視線に怯えつつも、必要な食材を早口で伝える。
それを黙って聞いていたエドガーが不思議そうに首を捻った。
「なにを作るつもりなの?」
「えっとね、『トマトカツ丼』だよ。騎士団の皆さん、疲れた顔をしてたから、疲労回復の効果があるトマトと玉ねぎ、スタミナをつけるお肉で元気を出してもらおうと思って」
料理を作るとき、まずはその人に必要な食材、栄養素からメニューを考える。
それは誰かのためにお弁当を作り続けたお母さんからの教えだった。
「話してるところすみませんが……その、しょーゆ? みりんというのは聞いたことがありません。どんな食べ物なんでしょうか」
割り入るように声をかけてきたオリヴィエに、エドガーも困った顔をして私を見る。