同期は蓋を開けたら溺愛でした
片付けをして自分のアパートに寄ってからの出社はギリギリになってしまって、駅から会社までの道を急ぐ。
ビルの前まで来て、なんとか間に合いそうだと呼吸を整えていると近くにいた人に笑われた。
「ずいぶん焦っているみたいだけど、遅刻しそうだった?」
声をかけられて顔を上げると、それは増永さんだった。
「おはよう、ございます」
「おはよ」
恥ずかしいところを見られたなと思いつつ、素直な感想を漏らす。
「間に合って良かったです」
「そうだね」
時計は始業10分前を指している。
ギリギリだけれど、遅刻せずには済みそうだ。
「ところで、前の話は考えてくれた?」
「前の?」
きょとんとしていると増永さんは私へ耳打ちをする。
「俺と付き合ってくれるかなって」
「え?」
囁かれた耳を押さえて仰け反ると笑われた。
完全に忘れてた。
「ははっ。ま、好機を逃したかなって諦めてはいるんだけどね」
「好機……ですか」
「言った時は誰かとの関係が危うそうだったから。でも、今は充実してそう」
誰かと言われ、すぐに大友が思い浮かぶ。