同期は蓋を開けたら溺愛でした

 打ち合わせが進み、一息ついた時。
 大友がポツリと呟いた。

「行くのか」

 唐突に聞かれ、何の話をしているのか理解が追いつかない。

「何が」

「増永さんとの食事」

「へ?」

 朝、エレベーターを降りた後も今までも何も言われなかったから、てっきり気にしていないとばかり思っていたのに。

 時間差で聞かれて間抜けな声が出てしまった。

「行くなよ」

 手を握られ、強い眼差しで見つめられてたじろぐ。

「今、ここ、か、会社だよ?」

「だからなんだよ」

「……大友?」

 なんだか様子がおかしくて不安な声が出る。
 だって、さすがに就業時間中にこんな話をするなんて今までなかった。

 私の不安げな視線から逃れるように手を離してそっぽを向く。

 それからこちらに向き直ると「このインクは……」と仕事の話に戻り、安堵した。

 いくら増永さんに意地悪な言い方されたからって。

 あんな、嫉妬してるような素振り……。
 食事に行くくらいで?

 大友の態度を不可解に思いつつ、それからはいつも通りだっため、特に気にも止めなかった。

< 157 / 319 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop