同期は蓋を開けたら溺愛でした
ランチを終えて帰える間際。
里美は私へ優しく問いかけた。
「大友くんと、そんなにないのか。よく考えてみたら」
私は曖昧な笑みしか返せなかった。
里美と別れ、商品企画課がある5階に降り立つ。
大友と顔を合わせる席に戻るのが憂鬱で、自然と足取りは重くなる。
ため息混じりにオフィスへ戻る途中、休憩室から男性が数名集まって盛り上がっている声が聞こえた。
その声の中から「青木さん」と自分の名字が出て、思わず身を潜め聞き耳をたてる自分に苦笑する。
「青木さんにアプローチしようとすると、その度に牽制してきて、やっとですか」
何が? なんのこと?
今日は『やっと』デーなわけ?
「本当な。俺も青木ちゃん結構好きなのになあ。あの天真爛漫な感じ」
「ダメっすよ」
大友の声が聞こえて胸がドクンと騒がしくなる。
「わかってるって」
「だいたい同期の西島さん? 総務で美人の。あの人のことは『里美』って呼んでて、青木さんのことは『お前』か、よく呼んで『青木』ですよね。なんなんですか」
この辺りから聞いていられなくなって、そっとその場を離れた。
気づかなかった。本当だ。
私は今まで『青木』で、里美はずっと『里美』だ。