同期は蓋を開けたら溺愛でした
ワンルームの大友の自宅はほぼベッドが部屋を占拠している。
狭いから、いつもベッドを背もたれに家飲みが始まる。
嫌でも視界に入るベッドを横目に、定位置に座るしかない。
部屋の脇にある冷蔵庫を開ける大友は、体に似合わない小さな冷蔵庫に体を屈めている。
「お前はビール? 缶チューハイ?」
「ありがと。ビール。雄は、さ」
ガコンッ。
すごい音がして目を丸くする。
缶を手から滑らせたらしい大友が「はは。これは別のにしなきゃな」としゃがんで缶を拾い上げた。
「どうしたの? 大丈夫?」
「不意打ち、やばい」
しゃがんだまま、髪にクシャリと手を入れて頭を抱える大友は恨めしげな視線をよこす。
「不意打ち? 突然、缶が落ちたのは確かに驚くけど……」
「名前、グッときた」
恨めしげだった視線が甘く細められ弧を描く。
「な、にを。呼べって言ったの、そっちじゃん」
「ああ、そうだよ」
「嫌なら呼ばない」
「ヤダ。呼んで」
しゃがんでいても図体はデカイ、大きな子どもみたいな大友に再び心臓は不正脈を起こす。
開けっ放しの冷蔵庫がピーピーと音を立て、ビールを2本手にした大友が扉を閉めると私のすぐ隣に座る。
いつも私の右隣。それが私たちの定位置。