ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
所を変え、今度は植物園を案内された。

ガラス張りの大きな温室には、赤や白やピンク色の色とりどりの花々が目一杯花弁を広げ、甘い芳香で満ち満ちている。

自ら手を伸ばし、創手は樹木の枝から何かをもぎ取った。

「食べて」

手渡されたのは真っ赤で、表面にイボイボがある果実のようだった。

角度を変えたりしながら観察するふりをしていると、創手はもう一つもいで、先に自分が口を付けた。

食べざるを得ない状況になったので、見たこともない怪しげなその実を齧ってみる。

びっくりするくらい甘みが強く、シャリシャリとしていて、グラニュー糖のような歯触りもあった。

「マンゴーみたいな味」

「ヤマボウシの実だよ」と創手が教えてくれた。

「美味しいですね」

あたしの言葉に、創手が顔を綻ばせた。

< 106 / 168 >

この作品をシェア

pagetop