ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
日が暮れる頃になって、小川の先にある林の中に家が建っているのが見えた。
白い壁に茶色の屋根、可愛らしい小さな平屋建ての家だ。木の柵に囲まれた畑もある。
抜き足差し足で、柵まで辿り着く。不可解さよりも好奇心が勝った。
家の窓には人影一つなく、明かりも灯っていなかった。
空き家なのだろうか。廃屋には見えないが、人の動静もない。
畑には縁がギザギザの葉っぱに埋もれるように、赤い実がたわわに生っていた。
熟れたイチゴだ。
見ているうちに、食したい欲望が生唾と共に湧いた。
あたしは嚥下出来ると経験から知り得ていたし、味覚を感じる舌もあった。
いかにも挙動不審に辺りを窺う。
少しくらいなら。誰もいないし。と、悪魔の囁く声が何処からか聞こえ、あたしは柵に手を入れ、一つ摘んだ。
今更気兼ねして、前歯で削る程度に齧ってみる。
「おお、イチゴだ」
甘酸っぱい感動と一緒に、実を口に放り込む。
ぷちぷちとした種の歯ざわりと、芳醇なイチゴの果汁がじゅわっと舌の上に解ける。
イチゴを崇めたくなるくらい、それは美味だった。
理性という名の緩い牽制を振り切った右手が、無断で二つ目に手を伸ばす。
食べるという行為の素晴らしさに脱帽した。一心不乱でイチゴを貪った。
ずっとずっと考えていたのだ。もし今食べることが出来たなら、何を食べようかと。
一位はおにぎり(具は焼きたらこがいい)。
二位はフライドポテト。
三位はラーメン。
この上位三つの最強炭水化物は常に不動だ。
イチゴなら八位入賞圏内にランクインは堅い。イチゴ礼賛。ビバ・イチゴ。
白い壁に茶色の屋根、可愛らしい小さな平屋建ての家だ。木の柵に囲まれた畑もある。
抜き足差し足で、柵まで辿り着く。不可解さよりも好奇心が勝った。
家の窓には人影一つなく、明かりも灯っていなかった。
空き家なのだろうか。廃屋には見えないが、人の動静もない。
畑には縁がギザギザの葉っぱに埋もれるように、赤い実がたわわに生っていた。
熟れたイチゴだ。
見ているうちに、食したい欲望が生唾と共に湧いた。
あたしは嚥下出来ると経験から知り得ていたし、味覚を感じる舌もあった。
いかにも挙動不審に辺りを窺う。
少しくらいなら。誰もいないし。と、悪魔の囁く声が何処からか聞こえ、あたしは柵に手を入れ、一つ摘んだ。
今更気兼ねして、前歯で削る程度に齧ってみる。
「おお、イチゴだ」
甘酸っぱい感動と一緒に、実を口に放り込む。
ぷちぷちとした種の歯ざわりと、芳醇なイチゴの果汁がじゅわっと舌の上に解ける。
イチゴを崇めたくなるくらい、それは美味だった。
理性という名の緩い牽制を振り切った右手が、無断で二つ目に手を伸ばす。
食べるという行為の素晴らしさに脱帽した。一心不乱でイチゴを貪った。
ずっとずっと考えていたのだ。もし今食べることが出来たなら、何を食べようかと。
一位はおにぎり(具は焼きたらこがいい)。
二位はフライドポテト。
三位はラーメン。
この上位三つの最強炭水化物は常に不動だ。
イチゴなら八位入賞圏内にランクインは堅い。イチゴ礼賛。ビバ・イチゴ。