ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
「一応訊くけど、僕に何をして欲しいの?」

「仲間に、記憶を返してあげて下さい」

創手は鼻を上に向け、冷笑する。

「君の大切な人の記憶はもうないって言ったはずだけど」

「彼には、ヒメの体を」

「何とも感動的な話だね。涙が出そうだ」

創手が足を止める。

「交換条件は? 代わりに君は何をくれるの?」

「あたしを差し上げます」

彼は蔑むような、醒めた目であたしを見た。

「君にそんな価値が? 随分な自信だね。それとも単なるヤケかな」

「あなたの傍にいて、あなたを愛します」

創手の眼差しが凝固する。

完璧すぎる顔立ちのせいで、まるで偉大な彫刻家の手によって彫られた彫像の一つみたいに見えた。それも最高傑作の部類のもの。

「意味が分かって言っているの? 君は一度僕を拒んだじゃないか。忘れたのか?」

「自分勝手は重々承知ですが、あたしが差し出せるものは、あたししかありませんので」
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