ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
手探りで門をまさぐる。
気ばかりが焦心に急き立てられるも、蔦と格子の間に隙間を発見し、どうにかこうにか体をそこに捻じ込んだ。
反対側から蔦を詰め込み、侵入の痕跡を隠蔽する。
息吐く間もなく、あたしは建物の方に急いだ。
入り口を探し、うろちょろしているうちに裏側に来た。
「げ……」
裏手は墓地になっていたのだ。奇なる形の墓石が等間隔に二列並んでいた。どことなくシンボリックな、双葉の形に見受けられた。
「お邪魔します」と心の中で手を合わせる。
この情景に、ここは天国ではないらしいと薄々気が付き、多幸感が引潮のように引いていく。
石造りの壁が一箇所、朽ち掛けた木戸になっていた。
あたしは音がしないように用心深く、でも力を込めて引いた。びくともしなかった。
もう一度同じ作業を繰り返すも結果は同じ。
ははん、と勘付いた。あたしを騙そうたってそうはいかない。
逃げている立場の癖に、何故か刑事のような心持になっていたあたしは、思い切り木戸を押してみた。
想定以上に易々と、それは開扉した。
「あっ?!」
勢い余ったあたしはそのまま階段から転落し、一メートル程下の石の床に、ずでんとお尻から着地した。
「あ、あ、あり、あり……」有り得ないと言いたかった。