ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
保安官が退散してからしばらく経った。
上の方にある窓には、爪先立ちしても手すら届かない。
外を窺うことも叶わず、あたしは檻の中を右往左往していた。
大丈夫、これは夢だ。死刑だなんて、そんなはずはない。と、しきりに自分に言い聞かせる。
自分の夢とはいえ、全く予期せぬことばかりだ。あたしもなかなかイマジネーション豊かだったということだろうか。
一人でニヤニヤしていると、俄かに外部が騒がしくなる。上空からバラバラバラという音が鳴り響いてきた。
この音、ヘリコプターの音では?
聖都の近衛部隊、連行、という保安官の言葉が蘇る。
あたしは怖気付いた。辺りの緊迫した空気に、なけなしの冷静さが煙のように掻き消える。
「ど、どうしよう」
どうにもならず、あたしはまたうろうろと歩き回った。
バシャーンという音が鼓膜を震わせた。いきなり何だと反射的に振り仰ぐ。
頭上の窓が割られていた。ガラスの欠片が床に散らばり、裸足では近寄れない危険物に変わる。
あたしはそれらを避け、壁際の隅に縮こまった。