ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
窓枠に手が掛けられたのを見て瞬きした。
汚れた手が二つ、それに続いてぬっと二つの目が現れた。
金色に光る両目。
あたしは震撼する。
教会の地下にいた化け物の目にそっくりではないか。カチンコチンになっていると、誰かが喋った。
「おい、出るぞ」
背後を振り返った。誰もいない。
「……あんたに言っている」
今度はもっとはっきり、呆れたような響きを持って耳に至った。
あたしでしょうか?
そう訊きたくて自分の鼻を指差す。
「早くしろ」
差し迫った、命令に近い物言いだ。あたしは口が利けず、あうあうと唇だけを動かす。
「死にたいのか?」